高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

日本人は思ったより働かない?

高城未来研究所【Future Report】Vol.696(10月18日)より

今週は東京にいます。

およそ1ヵ月ぶりに日本へ戻って参りましたが、季節がすっかり変わり、心地良い日々が続きます。
ただし、朝晩は思ったより冷え込み、寒暖差に注意が必要な季節でもありますので、ちょっとした上着は手放せません。
あわせて、ビタミンD3も増量して飲むようになりました。

さて、この夏に米国から日本へ長期滞在するため移住した友人知人たちと話すと、皆さん「なぜ、日本は休日ばかりなんだ?」とか、「日本人は思ったより働かない」と、多くの日本人の実感とは異なる見解を話します。

確かに、日本は諸外国に比べて圧倒的に祝祭日が多く、バカンス大国と呼び声の高いフランスが年間9日、米国が10日に対して、日本は欧米より1週間以上長い17日も休みがあります。
特にシルバーウィークと呼ばれる秋の休日が多い今頃は、毎月4連休や3連休が必ずあり、海外移住者から見ると役所や銀行に行くことができず、かなりお困りのご様子です。
これは、2003年に改正された国民の祝日の一部を、従来の固定日から特定週の月曜日に移動させた法改正ハッピーマンデー制度の恩恵?ですが、実はこの背景には、(主に自民党の)国会議員が地元に戻って地盤を固めるため、まとまった休みが欲しかったことに起因します。

また、「日本人は思ったより働かない」のは、ふたつの側面があります。
意外かもしれませんが、実質的な労働時間が極めて短い。
祝祭日が多いのもありますが、年間就業時間を見ますと日本1598時間に対し、米国1767時間、中国2169時間と短い就労実態が浮かびます。
さらに、日本企業の仕事をしたことがある欧米人は、「会議」と「確認」ばかりで、「生産性が驚くほど低い」と口々に言うのです。
これは僕も長年感じるところですが、日本の飲食店でオーダーすると、何度も繰り返して「確認」することが多く、いつも無駄だと感じます。
仕事の上でも、一度決めたことを「確認」する必要はなく、単なる自己保身のために双方の時間を無駄に使っているとしか思えません。
その上、大手企業の打ち合わせに出ても、資料作りに膨大な時間を使って、結局プロジェクトは進みません。
複雑系と言われる現代社会において、やってみなければわからないことばかりのなか、「会議のための会議」や「組織内根回し」に膨大な時間が割かれ、全世界に平等な時間ばかり失ってしまっているのを都度痛感します。

しかも、お互いがお互いを監視する社会体制になっているため、前例主義を徹底し、一人だけ新しい試みを行うことは絶対に許されません。
なによりお国(=日本式システム by U.S.A+官僚組織)やお家(経団連企業)の利得が、市民生活より先優先するような社会風潮があるのです。
ここ数年、円安が続きますが、日米金利だけでなく、本来の購買力平価からみますと1ドル100円程度ですので、ざっくりとした差額が日本式システムなどの古い仕組みの維持費と米国へのお布施と見ていいでしょう。

こうして、一人あたり購買力平価GDPだと台湾にも韓国にも追い抜かれ、日本人の実質賃金はポーランドやリトアニア以下、実質時給となるとルーマニアにも抜かれてしまい、1995年には世界の17.6%を占めていた日本経済は、5分の1に縮小してしまいました。
結果、内外含め多くの人たちが、「日本は貧しくなった」と感じるのです。
https://www.voronoiapp.com/wealth/Visualizing-Wealth-Growth-by-Country--2164)。

この要因は、「日本は中国同様の一党独裁かつ官僚主導の政治体制にあるのだろう」と、日々選挙演説を街頭で目にする日本在住の海外の友人たちは話します。
言うまでもなく、システムを大きく変えなければ成長することも脱成長することもできず、古いOSを維持するため、国民ひとりひとりから収奪しているような現状が続くのです。
まるでデトロイトのように。

1950年当時の1人あたりGDPを見ますと、当時のフィリピンはアジアでは日本に次ぐ豊かさで、韓国の2倍近くのGDPを誇りましたが、1965年マルコス政権誕生以降、政権交代が起きずに利権と従米政策が蔓延り、あっという間に短期間で貧しくなりました。

世界あちこちまわって、数字ではなく肌で景況を感じながらおよそ一ヶ月ぶりに戻った東京は、すっかり秋模様で選挙の時期。
季節が変わるように、政治も人でもなくシステムが変わらなければ新陳代謝が起きずに朽ちていくのは自然の法則だと、葉が落ち始める木々を見ながら考える今週です。

どうか朝晩と景気の冷え込みにご注意を。
 

高城未来研究所「Future Report」

Vol.696 10月18日発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 大ビジュアルコミュニケーション時代を生き抜く方法
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

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